こんばんは。夜中たわしのDOKI DOKI思考実験のコーナーです。
※記事内容が暴力的だと判定されないか、筆者がドキドキするコーナー
前回はトロッコ問題って一体何なのか? までを扱いました。
そしてこの問題には正解がないということも軽く説明しました。でも、答えがないって何だよ!? と思いませんか? 今回はその答えに可能な限り迫ろうと思います。
あ、トロッコ問題が何なのかは知ってるよ。って人も前回の記事は読んでおいてもらったほうがいいです。でないと展開(?)についてこれません。
【本日の論客】
夜中たわし
功利主義の犬
義務論のダンゴムシ
ダブルエフェクトの雪だるま
功利主義の考え
「最大多数の最大幸福」でおなじみ、ジェレミ・ベンサムの意思を継ぐ、犬です。どうぞよろしく。
(意外に丁寧な口調だな…)功利主義の犬さんは、トロッコ問題の2つのケース…レバーを倒すケースと、太った人を突き落とすケース(※前回の記事参照)について、どのように考えています?
私は、いずれも5人を助ける方を選びます。Aのケースではレバーを倒しますし、Bのケースでは、太った人を突き落とします。
理由を聞いてもいいですか。
だって、犠牲者は1人の方がマシでしょう? 一言で言うとそれだけです。
でも、太った人を突き落とすのに抵抗はないんですか?
抵抗がないわけじゃないですが、5人の命と1人の命を天秤にかけるなら、1人の方を選びますよね。自分の手が汚れるかどうかは関係ないんですよ。
あとついでに言うと、あの太ったダンゴムシは嫌いなんですよ。彼は、私のおやつを勝手に食べましたからね。
…。
義務論の考え
話の途中だけど、ちょっといいかな。
あなたは?
僕は『純粋理性批判』で有名なイマヌエル・カントの生まれ変わり
かもしれない、ダンゴムシだよ。
おやつ(ドッグフード)を返してください。
失われたものはもう戻らないよ。意見言ってもいい?
どうぞ。
あのね、どんな場合でも、人が人に対して手を下しちゃいけないと思うんだよね。5人を助けるためだったとしても、レバーを倒して1人を犠牲にしちゃいけないよ。何もしなけりゃその1人は助かるんだからね。人の命を何かの目的に利用しちゃいけない。そんなことすると裁判で有罪になるよ。
なるほど(ダンゴムシなのに)。
もちろん僕を落とすのなんて言語道断だよ。僕には何の罪もないからね。
でもおやつを食べた。
まあでも犬のエサを食べたとしても、突き落とすのはいかがなものかと思いますが…。
そもそもこの思考実験って、どちらを選んでも罪には問われないっていう前提があるんですよね。なら裁判がどうとか考えるのはナンセンスでは。
確かにそうだけど、どちらが正義かとか言い出したら、裁判のことは考えるよ。裁判がなかったとしても、後からその判断が正しかったかを追求されるよね。とにかく僕は面倒事に関わるつもりはないよ。関わらなければ責任は問われない。
まあそれは一理ありますね(ダンゴムシなのに)。
ダブルエフェクト(二重結果論)の考え
また別の考えの人(?)がいます。どうぞ。
おう。ほとんどの人が名前も聞いたことがないであろう、トマス・アクィナスが暇つぶしに作った、雪だるまや。
トマスさんって何者なんですか?(それはそうと、この人前回トロッコに乗ってなかったっけ…)
ようわからん。わい雪だるまやし。
!!
とりあえず、トマスの人が提唱したらしいダブルエフェクトっていう考えがあるんやけど、わいもその考えなわけ。ほとんどの人は、わいと同じ考え。絶対的多数派に位置するのがわいってわけや。
あなたはどのような選択をするんですか?
わいは、レバーは倒すけど、太った人は落とさへん。
確かにその選択をする人が世の中では1番多いらしいですね。
基本は功利主義の犬と同じ考えなんよ。レバーの方は。
はい。
で太った人の方やけど、まず太った人を突き落とした場合、助からへんのは確実やろ? それを分かっていて突き落とすのは、許せへんやろ? 5人が危なそうやけど、放っておけば何かの間違いで助かるかもしれへんから、それに賭ける。
要は、わざとやったかどうかやね。意図的にやらかすのはあかんけど、やむを得ずやらかすのはセーフやろ、ちゅう考えですわ。
あのですね、横から申し訳ないですが、功利主義も大体似た考えですよ。現実って不確定要素だらけじゃないですか。例えば何もしないでもトロッコが脱線するかもしれないし、作業員の人が何とかして避けてくれるかもしれない。テリーマンが止めに来てくれるかもしれない。
それをこの思考実験では、その不確定要素は全部排除されてるっていうからそれに従って結論を出しただけですよ。不確定要素を取り入れていいなら、太った人を本当に落とせるのか、落として本当にトロッコが止まるのか、とか期待値的なことを考えることになるから、答えは変わってきますよ。
功利主義の考えだと太った人を突き落とすんだ、これは非人道的! 功利主義は欠陥だらけなんだ!うわーーーっ!! って言われるのは納得行きませんよ。
は、はい。わかりました。わかりました。
???の選択
私は、レバーは倒さないけど太った人は落とすよ。なぜなら私は危険思想の持ち主だから。より犠牲を実感できる方を選ぶよ。
誰か、この人追い出して! スタッフ!! スタッフー!!
被害者の声
ちょっといい?
あ、あなた方はあの時の!!
【あの時】
生きとったんかあんたら! よく無事やったな!!
俺たちがモンスターだったことと、ここが全年齢対象の素晴らしいブログだったから助かったけど、普通の人間だったら終わってたわ(お前NiceShotって言ってただろ…)。
大体な、2回轢かれてる時点で大丈夫なことはわかっただろ? あれ実際に轢かれてるからな。誰だよトロッコを暴走させたやつは!? あとで訴えるわ!!
すみませんでした。
お前が仕組んだのかよ!
ドMか!!
結局ね、正義って相対的なもんなんだよ。この問題の正解があるとしたらこれ。「絶対的な正義は存在しない」。
正義があると思ってる人が多くて困るよ全く。この問題は人によって正義が違うってことと、正義が幻想だということを考えさせたいんだよ。
現代で言えば、裁判所の判断が正義かもしれない。でも裁判所も神じゃないから、それが本当の正義と言えるかはわからないわけ。結局その時の世論で何が正義か決まる。戦争中の事を考えてもらえばわかりやすい。
現実は何が起こるか予想不可能だけど、自分がどういう基準で正義というものを考えてるか、それは知っておいたほうがいいかもね。意外と多くの人が自分がなぜその選択を正義と思うか、答えられない人が多いみたいだからね。
な、なるほど…どうですかみなさん?
被害者の方が言うんだから、もう何も言えません。
仕方ないね。
轢いてすみませんでした。
ていうかダンゴムシ、大丈夫なら自発的に飛び降りてよ。
だって、すげー痛いからね。やだよね。
じゃあもう一回同じ状況にするんで、自分たちで投票して決めてくださいよ。
「汝は人狼なりや?」みたいになってきたな。
※汝は人狼なりや?:めっちゃ面白いと噂のテーブルゲーム。筆者はプレイしたことがない。
次週ッ! トロッコ問題編、最終回! 自動運転車問題
※書ききろうと思ったけど予想以上に長くなったので分割
おわりに
トロッコ問題についてはこの本が、ストーリー仕立てになっていて面白いです。唐突ですが。
トロッコ問題と同じ状況下で路面電車の進路を切り替えた女性が裁判にかけられ、陪審員が議論を重ねていくという展開になってます。
でも当ブログのこの記事のように被害者を同じ土俵には上げてはいないから、こっちの方がある意味では、上だろうな。勝ったわ…! ある意味。
おすすめの書籍:『100の思考実験』