こんばんは、夜中たわしです。
本日は傑作として名高い『ライフ イズ ストレンジ』というゲームの感想について。本作はPS4・PS3・Steamに提供されていますが、私がプレイしたのはPS4版です。
※2017/12/22追記:iOS版が配信開始されたほか、アンドロイド版も予定さてています。
途中から微ネタバレ、後半に結末のネタバレがあるのでご注意ください。ネタバレ前にアナウンスはします。
基本的に後半になるほど激しいネタバレがあるので、未プレイの方はこれからプレイしようかな、と思ったタイミングで離脱することを推奨します。
こちら随分前にクリアしていて感想記事を書きたかったのですが、中々書けず(理由は後述)。
少しずつ書き進めていたところ、続編開発のニュースが飛び込んできたのでこれを機に書き上げました。
世界観
『ライフ イズ ストレンジ(life is strange)』は、アドベンチャーゲームです。
本作の舞台はアメリカで、主人公はマックスという女子学生。彼女が突然、時間を巻き戻す能力を手に入れたことから話が動き始めます。
似た系統の作品は、いわゆるタイムリープ系もの、有名どころだと映画『バタフライ・エフェクト』や、原作がゲームでアニメにもなった『シュタインズ・ゲート』などが近いです。
逆に言うとこういったタイムリープ系作品をあまり体験しすぎていると、ちょっと物足りないかも。
あとハードSF的な展開を期待するのではなく、アメリカの青春SF(すこしふしぎ)ドラマだと認識して遊んだ方がいいです。でないと肩透かしを食らう可能性あり。
余計な前置きが多くなりましたが、このゲームの真骨頂は実際にキャラクターを操作し、時に時間を巻き戻して物語にガッツリ介入できる部分! この後詳しく紹介していきます。
ところでこのゲーム、タイトルで損してると思います。
この和訳から受ける印象だけだと、なんというか大した事ないB級アドベンチャーゲーム感があります……。
ゲームシステム
移動
基本はマックスを操作して歩き回り、会話や探索などを行うことでストーリーを進めます。
いわゆる紙芝居系のアドベンチャーではありません。
時間を巻き戻す
そして目玉機能がこちら。
ボタンひとつで時間が巻き戻せる!
具体的にこの能力で何ができるかというと例えば
こう選択肢が出てきて
マックスの知識が足りず、話についていけないような事があっても
巻き戻せば選択肢が増えて
あたかも元から知ってたかのようにふるまえます!!
このように未来で得た知識を使って過去を選び直すことができるのはもちろん、RPGやアドベンチャーゲームなどをプレイしていてよくある「もう片方の選択肢を選んでたらどういう反応だったのかな~」っていうのが、ロードせずに即座に試せます。
この選択肢の選び直す機能を主人公の能力としてゲームシステム的に用意しているのが、3Dのアドベンチャーゲームとしては画期的で没入感が高いです。
この時点で興味を持った方は、この先は読まずに購入しても損はないかと。
時間を巻き戻しても取得したアイテム、自分の位置は戻らない
この時間の巻き戻しですが、ちょっと普通じゃない特性がありまして、
時間を巻き戻す前に取得したアイテムは時間を巻き戻しても持ったままとなる上に、マックスのいる位置も移動しません。
これを利用すると、ドアを無理やりこじ開けて部屋に入った後に時間を巻き戻して内側からカギを開ける、といった行動も可能になります。
この特性がストーリー中の謎解き要素として利用されることもしばしば。話をすすめる上でのスパイスとして活かされています。
しかしこの特性、純粋に「時間を巻き戻してるのに、なぜアイテムと自分の位置は戻らないんだ?」「他人から見ると、マックスやアイテムが瞬間移動しているように見えるのでは?」などといった疑問が浮かびます。
しかしその疑問についての説明は一切ないため、私たちは「そういうもんなんだ」と受け入れる他に道はありません。システムとしては面白いんですが、ここは少し不満です。詳しくは後述します。
選択で未来が変わる
ロード画面などで度々忠告があるんですが、ゲーム中には多種多様な選択肢が登場し、それによって未来が変わります。
ストーリーの本筋とは関係ないサブ的な選択も多数存在します。水をあげなかったことで植物が枯れたりする小さなものから、大きなものだと人の生き死にに影響する選択まであります。
これによりゲームへの介入性が高く、プレイヤーの選択により物語が紡がれているという没入感を一層高めています。
ある登場人物が生きている場合はその人から情報を得られるものが、死んでいる場合は別の手段で情報を手に入れるなど、選択によって細かな違いが多数発生するため、作り込みが半端ないです。テストプレイが大変だったであろうことが伺えます。
ただ途中の選択によりストーリーの展開は変わるものの、大きな道筋は変わらず一番最後の結末に影響することはありません。まあそこまで求めるのは酷ってもんでしょうか。
なおこの選択内容は章ごとのクリア時に表示され、ネットワーク機能で他のプレイヤーがどの選択肢を選んだか、統計が表示されます。
面白い機能です。自分が多数派なのか少数派なのか、自分の感性を確かめることができて結構興味深い。
メニュー
こちらはメニュー的な画面なんですが、無機質なメニューではなく手帳のようなテイストになっていてよく作り込まれています。上記は日記のページ。
ストーリーが進むと日記が追記されていくので、プレイ期間が空いても振り返りが容易です。
人物紹介的なページもあり、あれ? この名前って誰だっけ? となっても安心です。私は登場人物の名前を覚えるのが非常に苦手(特に海外の名前)なので助かりました。
タブレット的なものに登場人物からメッセージが届くことも。このあたりのインタフェース、好みです。
トロフィー/プレイ時間
トロフィーのコンプリートは非常に簡単で、20~30時間程度でコンプリートできました。
選択肢が沢山あるため、全分岐をプレイしろというタイプだったら間違いなく挫折するところでしたが、基本的に特定のスポットで写真撮影をするだけでトロフィーが集まるため難なくクリアできました(攻略情報は見ましたが)。
一旦クリアしてから特定のチャプターをパラレルワールドとして遊ぶことができるため、大幅なやり直しは必要ありません。
良かった点
ここからは少しネタバレを含みます。気になる方はここをクリックして最後までスキップしてください。
さて上述の通り、時間を巻き戻すというシステムは一級品で、これだけでもプレイする価値があります。
ここでは加えて、私の好みだった部分を紹介します。
シリアスギャグ
本作、時間の巻き戻しを利用したシリアスなんだかギャグなんだかわからない絶妙な展開がいくつもあります。
例えばこちら。
このキャラはマックスの親友でクロエと言います。マックスの能力を知っているんですが、なんかめちゃめちゃ物騒なことを言ってますよね。
「死んだ人間はドラゴンボールで生き返らせればいい」と淡々と言っていた悟空を思い出します。普通じゃない。
クロエの愚行
彼女は時間の巻き戻し能力を利用し、拳銃の弾をビンに百発百中させるという試みにマックスを誘います。
外れたら時間を巻き戻し助言することで、クロエからすると必ずビンに当たってるように見えるためまさに魔法です。
調子に乗って跳弾させた弾をビンに当てる、という企画をするクロエ。
ところが車を狙ったところ、
跳弾した弾がクロエ自身を襲う!
これにはマックスもガッカリ……。もちろん時間を巻き戻して事なきを得ますが、マックスに当たらなくてよかったなあ本当に。
クロエはこれ以外にもマックスの能力を期待してやりたい放題することがあるので、必見です。
マックスも負けてない
さて主人公、マックスも時間を巻き戻す能力を利用して暴挙に出ることがあります。
彼の名はフランク。一見悪そうに見えますが、見かけ通りヤバい奴です。
訳あって食事中のフランクから情報を引き出しにきたマックス。画面の選択肢がおかしいです。「こぼす」?
試しに「こぼす」を選んでみると、「豚みたいね。床で食べたら?」と信じられない発言をし料理を床にぶちまけるマックス(普段のマックスはこんなことしません)。
一瞬何が起こったか理解できないフランク。
まるで『北の国から』での田中邦衛のような発言(子供がまだ食ってる途中でしょうが!)をするフランク。
怒りのあまり飛び出すも床の料理で滑って倒れるフランク。
もちろんこの後フランクに襲われてしまうので時間を巻き戻すしかないんですが、だからってやりすぎだろう、マックスよ。
かわいそうなフランク
フランクは他にもひどい目に合っています。
こちら場面変わって再びフランクに情報を得るため近づいたマックスとクロエ。
選択肢により交渉していくんですが、フランクはすぐに怒り始めます。
揉み合いになって
銃が暴発し、足を撃たれてしまうフランク。
失意の中、足を引きずりながら車に戻っていくフランク。
これだけだと、ちょっとフランクがかわいそうなだけのイベントなんですが、イベント後にはフランクを怒らせず、撃たずに解決するルートが示唆されます。
そうなると撃たずに解決したいのが人情というもの。
時間を戻してやり直すわけですが、選択肢が多岐にわたりフランクを怒らせないルートはたったひとつ。
すると2回目も
こうなります。
私は2回どころか、5回以上このシーンを見ました。
(あああ! 何をやっても、フランクが自業自得で足を引きずってしまう!!)
こうなると、開発者の悪意を感じずにはいられません。たぶん、ここはブラックなギャグとして作られています。
フランクは何度も足を撃たれることになって本当に申し訳ないんですが、これ系の展開は好きです。こういう展開、他にもいくつかあります。
狂気の世界
ストーリー中、マックスの脳内世界に行くことになるんですが、これが怖い。
ちょっとだけ紹介しますと。
数字だらけのトイレに閉じ込められたり。
窓の向こうに巨大なリスがいたり。
友人が謎の扉を開けて光り輝く世界に行ったり。
校長先生の銅像がサーチライトを出しながら回転していたり(画像が暗すぎてすみません)。
本当はもっともっと狂ってるんですが、ちょっと動画じゃないと表現しきれないので割愛します。ぜひ体験して確かめてください。
このわけのわからない世界、好きです。
『マザー2』のムーンサイドや、フリーゲームの『ゆめにっき』を思いだしました。
気になった点
ここからは気になった点です。
ストーリーが陰鬱
部分的にはスカッとする展開もあるんですが、全体的に気分が重くなるようなエピソードが続きます。最初の方に出てくるのはアメリカの学生間のいじめ問題とか。
嫁も一緒にプレイを見ていたんですが、後半は面白いものの序盤の話は好きじゃないと言ってました。確かにわかる。
時間の巻き戻しが微妙に使いづらい
時間を巻き戻す能力ですが、短期的には巻き戻せるものの、エリアを移動した場合など、シーンをまたぐとさすがに巻き戻せず、その場合は普通のゲームと同様にロードするしかありません。
またいつでも巻き戻せるわけじゃないので、固定のイベントの途中で巻き戻して展開をもう一度見る、といった使い方ができません。
あとは細かな巻き戻しができず、会話の先頭まで巻き戻されてしまうことがあります。例えば上記で紹介した足を撃たれるフランクのイベントだと、選択肢が複数あるうちの最後だけ間違えたから巻き戻したい、という場合でもフランクと出会うシーンまで戻されます。また初めから選択肢を選ぶ必要があり、これはダルい……。
イベントのスキップがあまりできない
イベントのスキップ機能があるにはあるんですが、使える場所がかなり限定されていて、あまりスキップできません。
例えばキャラの会話はフルボイスなため、全部聞かないと進めない上、一度聞いた会話でないとスキップできないケースがほとんどです。
2週目のプレイでも聞いていない扱いになるため、やり直すのが非常に億劫です……。
せっかく選択肢によって色々変わるので別の展開も見たいのに、このおかげでプレイする気が起きません。ここが一番残念な点です。頑張って実装してほしかった……。
矛盾点が多い
タイムリープ系の物語で矛盾点がない、なんてありえませんが、それにしても多く感じました。
例えばゲームシステムの紹介時にも触れましたが、時間を巻き戻す前に取得したアイテムは時間を巻き戻しても持ったままとなる上に、マックスのいる位置も移動しない、という性質。
やっぱり、変です。何がどうなっているのか分かりません。明らかにゲームの都合上の設定です。
そう考えるとこの時点で「ガチガチのSFとして考えちゃダメだよ」というのを暗示していたのかなぁ……。
ストーリーでも、特にラスト付近の展開に納得の行かない部分が……。大きなネタバレになるんでこれは後述します。
結末についての感想(ネタバレあり)
ここからは物語の結末について触れます。これからプレイ予定の方はここをクリックして最後までスキップすることを推奨します。
最後の展開
まず最後、エンディング直前の展開を簡単に。
なにやら天変地異が起きてます。
これ、このままだと街が壊滅するレベルの災害です。
ここでマックスは究極の選択を迫られます。
それは、親友であるクロエを犠牲にするか、それとも街を犠牲にするか。
物語の序盤、マックスは能力を使ってクロエが殺されるのを回避しています。
マックスとクロエが言うには、クロエの死を回避し、未来を変え続けたためその反動で天変地異が起きているとのこと。
なので過去をもとに戻し、クロエが殺される世界にすれば天変地異は起こらないはず。と、そんな展開です。
この展開は熱い。激しめのトロッコ問題です。
選択によりクロエを見殺しにすると天変地異は起こりません。
逆にクロエを生かすことを選ぶと街が壊滅、住人は全滅です。
壊滅した街を尻目に、2人で車で何処かに旅立ちます。
どちらを選ぶかはプレイヤーによって半々のようです。
ここで、ストーリー上クロエを好きになっていた場合はこの選択が非常に苦しく、苦渋の決断でどちらかを選択することになります。
そしてクロエを好きになっていなかった場合(正直クセのあるキャラです)、普通にクロエを見殺しにすることを選択するでしょう……。
説明不足感
ここで私が思った疑問について。
なぜかクロエを見殺しにすれば天変地異は起こらない、という意見で2人の意見は一致しているんですが、なぜその結論になるのか根拠がありません。その後の展開を見ると実際その通りなんですが、2人には分かり得ない話です。
自分がクロエの立場だったら、
「えっえっ、ちょっと待って! なんで私が死ねば異常気象起こらないの? バタフライ効果の語源が『蝶の羽ばたきが竜巻を起こす』って意味だから、百歩譲って私が生きていることで空気に何かが作用して竜巻が起こる可能性は認めてもいいけど……」
「天変地異のひとつ、月が2個になったやつは私が何をしようが起こるはずないのでは?」
「ちょっと、せめて私が殺されるんじゃなくて、半殺し程度でどうなるか試してみません???」
このような検討が行われることもなく、
能力関係の疑問、
- マックスはなぜ能力を手に入れたか?
- 能力を使うとなぜ鼻血が出ることがある?
- 能力を使うことでなぜ天変地異が起こった?
このあたりも説明されずに終わります。
まあ何でも説明を求めるのは私の悪い癖かもしれませんが、天変地異の原因くらいは知りたかった……せめてもうちょっと頑張って、何がきっかけなのか検証してほしかった……(マックスも鼻血が出てキツイのは分かりますが)。
おかげで私は少し消化不良、そのためちょっとこの感想記事を書くのが難しかったのです。
ただ、ちょっと時間を置いたことで感情が変わってきました。
青春ドラマ
初めに少し触れましたが、本作はSFじゃなくてSFのエッセンスのある青春ドラマでした。私は勝手にもっとSF寄りの話を期待していたので、少し拍子抜けしました。
人間同士の関わりを主軸においた結果、些末な矛盾や説明不足などの問題はスッパリと切り捨て、結果この空気感、人間ドラマ、そして究極の選択が生まれたのでしょう。
着眼点をそちらにおけば何の事はありません。私は誤解していたのです。この作品を傑作と呼ぶ方が多いのも納得がいきました。
クロエを生かすことを選択した後の、崩壊した街を出ていくシーン。
これ初めてみた時には印象はよくなかったんですが、今となってはこれ以上ない名場面に思えてきました。この後何がどうなるか、全然わからないですし、未来がある。
おわりに
ストーリーに少しご都合主義を感じるもののゲームシステムと雰囲気は一級品です。
青春ドラマとして見れば素晴らしい内容でした。
開発の決定した続編ですが、まず間違いなく買うと思います。
ところでこのゲームをプレイして以降、しばしば夢の中で時間を巻き戻しています。「ちょっと試してみて、危ないことになったら巻き戻せばいいじゃん」みたいな。
こんな夢を見ているのは私だけでしょうか?
ゲームと現実の区別がつかなくなる一歩手前みたいで少し怖いですが、そういった夢を見てみたい方にもおすすめです。
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