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いらすとやの素材で三題噺をやってみた『完璧なクレーム処理ロボット』

こんばんは。夜中たわしです。

「三題噺」というものをご存知でしょうか。

3つのお題(単語)を元に物語を作るという、創作を行う人々の中ではメジャーなトレーニング方法のひとつです。

最近で言えば、ピコ太郎氏が「ペン」「りんご」「パイナップル」の3つのお題から『PPAP』の作詞を行ったというのはあまりにも有名です(たぶん)。

私も一度は「三題噺」をやってみたいなあ、と思っていたんですが、普通にやっても芸がありません。

そこでお題を単語ではなく、3枚の画像でやってみるというのを思いつきました。

少なくとも、ビジュアルが付くので読者にとって多少読みやすくなるのでは?

ということでイラストのフリー素材と言えばいらすとやです。

するとどうでしょう。


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なんと、「ランダム表示」というボタンがあるじゃないですか!

ランダム表示なんて誰がどういう目的で使うんだろ、と思っていましたが、そうか。

いらすとやは、フリー素材が「三題噺」に利用されるのを予見していた……?

お題

ともかくお題を抽選してみましょう。

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クレーマー。


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消費者金融。


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クラーク像。

以上です。クラーク像……?

まあやってみますか。

完璧なクレーム処理ロボット

1

株式会社「少年よ大志をちょっと抱け」の主力商品は、幸運のクラーク像である。


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1/12スケール金メッキ仕立て。購入者はもれなく運気が上がり、その像が置かれた家の少年はもれなく大志を抱く、という触れ込みで値段は99,800円のお値打価格。

控えめに言って、あまりいい商売とはいえない。

しかし営業が有能なのか、強引なセールスにより結構な数が売れるには売れる。

ただ、その商品の性質からか日々クレームの電話は鳴り止まず、実に半数以上はクーリングオフにより返品される有様であった。

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今後の経営方針を考え直す必要がある。社長がそのような思案を巡らせていたところ、とある広告が目に入ってきた。

「何? 完璧なクレーム処理ロボット……? どのようなクレームに対しても、完璧な対応を行います……か。最近のロボットの進歩は凄まじいな」

今なら試用期間として1ヶ月間無料であることが記載されていた。

「完璧ってのはさすがに誇大広告だと思うが、少しでも返品数が減ればいいし、人件費の削減になるだけでも儲けものだな」

かくして、その日のうちにロボットは納品され、クレームの電話はロボットに回すことになった。

2

すると驚くべきことが起きた。返品がゼロになったのだ。

気になった社長はロボットがどんな手品を使ったのか、電話の内容に聞き耳を立ててみる。

「首が外れるのは仕様デス」

「それは息子さんが大志を抱いている最中デス。いい傾向デスヨ」

「爆発することもありマス」

「オ金が払えナイ? 消費者金融というサービスがありマス」


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特別な話術を持っているわけではなさそうだ。むしろ相手を逆なでするような発言にも聞こえてくる。

なんでも、ディープラーニングという技術で学習した人工知能が相手に合わせて最適な返答を返す他、1/fのゆらぎの会話術とやらによって上手いことやるらしい。

しかも聞いているとサラ金からお金を借りてまで買ってくれている人もいるようだ。

「詳しいことは分からないが、これで今月の業績は倍以上だ……!」

その後もクレーム処理ロボットは絶好調。返品は一切なく業績は伸び続けた。

ところがある日。

「社長、大変です! たった今連絡があったんですが、昨日出荷分の幸運のクラーク像20体、間違えて漬物石を梱包して出荷してしまったみたいです!」

「え! なんで!!」

株式会社「少年よ大志をちょっと抱け」では幸福のクラーク像以外に漬物石も扱っている。

製造ラインでのトラブルが原因だったが、やってしまったものはしょうがない。このクレームは流石にロボットでも対応不能だろう、と社長は腹をくくった。

ところが。

「それは『当たり』デス」

「大志を抱けるだけじゃナク、漬物も作れマス」

「お金が払えナイ? 消費者金融というサービスがありマス」

なんと購入者は全員、漬物石で納得したようだった。

社長は驚き、そして翌日からクラーク像の生産ラインは停止し、漬物石を送り付けるように切り替えた。

クレームの電話はひっきりなしにかかってきたが、ロボットの対応のおかげでまったく問題にはならなかった。

幸福のクラーク像と言う名の漬物石は飛ぶように売れた。

そして社長はあることを思い立つ。

3

「あの! 幸運のクラーク像じゃなくて『無』が送られてきたんですが!?」

そんな電話がかかってくるのも当然である。漬物石を送るのもやめて、空っぽのダンボールを送付してみたのだ。

「『無』の素晴らしさをご存じないのでスカ!?」

「『無』にお金を払うのは最高にシアワセなことでスヨ」

「お金が払えナイ? 消費者金融というサービスがありマス」

社長にもなぜそれで客が納得するのか理解はできなかったが、その後も単なる空のダンボールが飛ぶように売れた。

そしてある日。

「社長! ロボットが動かなくなりました!! クレームの電話がまったく処理できません」

「何だって!!」

社長がすぐさまロボットのもとに飛んで行くと、すぐさま原因はわかった。

ロボットの胸部にはモニタがありそこにはこう表示されていた。

『1ヶ月の試用期間が終了しました。継続して使用する場合、プロダクトキーを購入してください』

「すぐ販売元に電話だ!!」

4

電話はすぐに繋がった。

「クレーム処理ロボットのプロダクトキーの購入をご希望ですね? 月間ライセンスが5000万円となっております」

「は!? そんな金額払えるか!」

「……少々お待ちください」

どうやら別の担当者に電話を回したらしい。

そして電話の向こうの声が、どこか聞き覚えのある声に変わった。

「消費者金融というサービスがありマス。あ、企業なら銀行から融資を受けることも可能ですヨネ」

おわりに

こんな感じです。

オチをもう一捻りしたかったですが、私の実力では限界でした。

ということで「いらすとやで三題噺」、お話を作ってみたい方や、ブログのネタがなくて困っている方など、どうぞお試しあれ。

文章量はもっと短めにした方が楽だと思います(3時間以上かかった)。

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