「世界五分前仮説って知ってる?」
「世界は実は5分前に始まったのかもしれない、というやつだろ。この話、5分前にもしたよね」
「でも俺たちには5分以上前の記憶があるから、世界は5分以上前から存在するのでは?」
「その記憶さえも5分前に用意されたものかもしれない、って話だよね。そしてこの話も5分前にもしたよね」
「そういやそこに30分前にお湯を入れたカップ麺があるけど」
「世界五分前仮説が真実だとすれば、それは5分前に、すでにお湯を入れて25分が経過した状態で作られたということになる。後で捨てといて」
「ところで何で『5分』なんだろう」
「たぶん意味はないよ。5時間でも、5年でも、一万年と二千年前でも成立するし、5分前がただ単にインパクトがあるからだと思う」
「そうなのか」
「イギリス人のバートランド・ラッセルって人が生み出した概念みたいだけど、日本人が考えてたら『3分』だったんじゃないかと思う。なんたってカップ麺とウルトラマンがあるから。そしてこの話も5分前にもしたよね」
「その5分前に世界を作った人はナニモノなの?」
「さあ……それが神様なんじゃないの?」
「その神様は、5分前に俺たちと手遅れのカップ麺を作って、しかもよりにもよって世界五分前仮説の話をしている状態にしたってこと?」
「そう、世界五分前仮説が正しいとすれば、5分前に俺たちと手遅れのカップ麺を作って、世界五分前仮説の話をしている状態にしたってことになる」
「世界をそんなわけのわからない設計にするわけないじゃん。何がしたいの、神様は。バカなの?」
「まあ普通そう考えるよね。こんなヘンテコな世界を意図して5分前に作ったなんて考えられない。でも反証はできないんだよなあ」
ていうか世界五分前仮説は正しいよ。そして私はバカじゃないです。
「!!? あんたは?」
この記事の作者だけど。
「え! 記事の作者って何??」
まあ気にしないでもいいよ。 とりあえずこの世界を5分前に作ったのは私です。この記事の冒頭、「世界五分前仮説って知ってる?」と発言される直前にこの世界はできました。それ以前の記憶は作られたものです
「なんか確かに俺たちとは次元が違う気がする。吹き出しで喋ってるし。見た目はたわしだけど」
「たわしの神様! 何なんですかこの世界は! どうしてこのような世界を作ったんですか!」
短編だから信じるのが早くて助かるよね。こんな話するの、小説や映画だとしたら終盤ですよ。あと神様はやめて。
「そんなことより早く教えてください。俺達と手遅れのカップ麺は何のために作られたんですか?」
それはこのブログ『夜中に前へ』の読者の方々に、『世界五分前仮説』をネタにした記事を提供するためです。
「全然単語が理解できません」
「じゃ、じゃあ何のために俺たちの前に降臨したんですか?」
降臨って言うのやめて。それは、世界五分前仮説を証明するには上位の存在の介入なしでは不可能だと気づいたからです。なので、わかりやすいようそれをちょっとやってみました。
「わかりやすいようには思えないけど、俺達はしょーもない理由で生み出されたんだろうな、ということはわかった」
すまぬ。
「ところで俺たちはこれからどうすればいいんです?」
あ、この世界はそろそろ消滅します。5分前に作られてもう役目を果たしたんで、いつ消滅してもおかしくないよね。
「えっ! 俺たち死ぬの? 痛いのやだー!!」
死ぬわけじゃないし、痛みはないです。無に帰るだけなので。痛いのがいいならやってみるけど。
「遠慮します」
「しかしこの俺達の世界が5分前にできたのは認めるとして、あんたの世界はいつできたのか分かってるのか?」
それが、ぜーんぜん分かりません!! 神様ーー! この現実世界は何なんですか? 見てたら連絡くださーーい!! もしくは読者になるか、ツイッターアカウントをフォローして何かメッセージくださーい!!
おわりに
変な世界も消滅したのでいきなり素に戻りますが、この思考実験シリーズ、次回は「シミュレーション仮説」その次は「全能のパラドックス」を予定しています。
それでは、その時まだ世界が続いていればお会いしましょう。