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歴史トンデモ考察小説『邪馬台国はどこですか?』オーディオブック版感想

こんばんは。夜中たわしです。

オーディオブック(FeBe)で『邪馬台国はどこですか?』という作品を聴きました。

オーディオブックについてはこちらをどうぞ。

歴史ミステリ小説?

なんというか、変わった小説です。

一応「歴史ミステリ小説」という謳い文句なんですが、内容はバーで4人が歴史談義をしているだけというもの。会話の内容は突拍子もなく面白いんですが、バーで殺人事件が起こるわけもなく、話をしているだけで終わります。

話の展開は、過去の史実に対するトンデモ理論を展開する男性と、それにひたすら反論する女性、と言った構図です。

実際のジャンルは「歴史トンデモ考察小説」というところですかね。

話をしているだけというのは、このブログで紹介した作品では多少『星を継ぐもの』に似てるかもしれません。いやそんなことないか。ぜんぜん違うかも。

収録内容

以降、多少ネタバレを含みます。

本作は短編集となっており、収録されているタイトルとその内容は下記の通りです。

  • 悟りを開いたのはいつですか?:ブッダは悟りを開いていなかった説
  • 邪馬台国はどこですか?:邪馬台国、岩手にあった説
  • 聖徳太子はだれですか?:聖徳太子、推古天皇と同一人物説
  • 謀叛の動機はなんですか?:織田信長、自殺説
  • 維新が起きたのはなぜですか?:明治維新、勝海舟が催眠術で起こした説
  • 奇蹟はどのようになされたのですか?:イエス・キリスト、替え玉死体(ユダ)により復活説

はい。

無茶苦茶でしょう?(いい意味で)

感想

大昔の話って、古い書物からの情報しかないんで、通説となったいる歴史も推測でしかないんですよね。

この作品はそんな中、とにかく根性の曲がった歴史解釈をひねり出してみたような感じです。

読み進めていくと、「うーん、確かにそんな可能性もあるかもしれない。むしろそうだった方が面白い!」という感覚になってきました。

あまり歴史には明るくないんですが、特に面白かったのはブッダの話とキリストの話。

これらは、聖☆おにいさんを愛読していたため楽しめたような気がします。

ちなみに個人的に一番面白かったのはブッダについての話。

その中で「ブッダは商人の子だ」という危ない説が出て、いやいや、仏典には王家から出家したと書かれているじゃないか、という反論があります。

それに対して出たのがこのセリフ。

仏典を鵜呑みにはできないよ。もし仏典の記述を全部信じるなら、ブッダは母親の脇の下から生まれて、生まれた瞬間「天上天下唯我独尊」と喋ったことになる。

これは笑いました。

うーん、もしうちの息子が嫁の脇から生まれて「天上天下唯我独尊」とか言い出した日には、もうこの世の終わりですよ。嫁には悪いけど、一旦逃げます。すまぬ。

という感じで、歴史に詳しければ詳しいほどそのトンデモ理論が楽しめる(あるいは怒りが満ちてくる)と思います。

オーディオブック版

この作品では、4人の人物が登場しますが、それぞれ違う声優が演じていて、聴きやすかったです。

ただこれは元の小説の問題ですが、反論役の女性が若干ヒステリックで、「そんなことを信じているなら本物のバカね!」というように、たびたび人格攻撃をしてくるのが気になりました。

本筋とは全く関係ありませんが、ドMの人にはおすすめかもしれません。

ある意味、原作のとおりよく演じられていると思います。

おわりに

この小説、元々は原作者の方が通っていたバーのマスターから、面白いから論文にして学会に発表してみては? と提案されたみたいです。

しかし流石にそれは抵抗があったため、小説にして出してみた、とのこと(小説化したのはKさんという方だそう)。

小説ならどんなに荒唐無稽な話をしても文句は言われないだろう、と。

確かに。

推理小説なんかだと、超危険な思想を持った犯人がバンバン登場しますが、作者の人が怒られることはほぼありません

全然関係ない話題になりますが、ネットに危険なことを書いて炎上してしまう人がたまにいますけど、小説形式にしておけば安全に思想を発信できそうだな。などと思いました。

小説形式って、いい「隠れみの」なのかもしれません。そう考えると、ちょっとずるいですね。


※本作、AmazonだとKindleUnlimitedの対象になっているようです。(2017年1月5日現在)

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