「有名な思考実験の1つに、トロッコ問題というものがあります。今日はこのトロッコ問題について考えてみます。いいですか?」
「はーい」
トロッコ問題A
「スタンダードなトロッコ問題は、こんな内容です」
「線路を走っているトロッコが制御不能になりました。このままでは前方で作業中の5人がトロッコに轢かれてしまいます」
「えーっ!!」
「このときあなたは、線路の分岐器の近くにいました。あなたが分岐器のレバーを引き、トロッコの進路を切り替えれば5人は助かります」
「なんだ、やった。切り替えようよ」
「ところが、別路線にも1人作業員がいるため、代わりにその人が轢かれてしまいます」
「なんてこった」
「えー、無理だよ! 選べない!!」
「もしかしたらわかり辛いかもしれないので、図にしてみます」
「何か登場人物が全員モンスターに見えるんだけど!?」
「気にしないでください。ちなみにこの図は私がすごく頑張って作りました。大変でした」
「あとこのレバーは何?」
「分岐器のフリー素材が見つからないので、代わりに焼き鳥のレバーを使いました。許してください」
「ああ、そう…」
「さて、あなたはレバーを引きますか?」
「レバーは引きません!」
「あーっ!!」
「だってモンスターなんだもん…いっぱい倒したほうがいいよね」
「ああ…ちなみにほとんどの人は、レバーを引くそうです」
「それは人間の場合だよね。わたしも人間相手なら、辛いけどそっちを選ぶかな…」
「…ちなみにこのトロッコ問題について先日、一大センセーションがありました。以下の動画は、2歳児に対してこの難問をぶつけた際の回答だそうです。一体どのような回答だったか? 少し考えてみてください」
「うーん、想像つかないな。2歳の子にこんな難しい問題理解できるの?」
A two-year-old's solution to the trolley problem
答え:1人を移動させ、全員轢く
「おーい、なにやってんのこれ!!」
「私も度肝を抜かれました。答えがわかった人は、連絡ください。その発想力で私と事業を起こしましょう」
「今書いてるこの記事は、『これからの「正義」の話をしよう』を今更読んで触発されて書いてるんですが、流石のサンデル先生も想定していなかったに違いありません」
トロッコ問題B
「さてトロッコ問題には派生系があります」
「ほう」
「線路を走っているトロッコが制御不能になりました。このままでは前方で作業中の5人がトロッコに轢かれてしまいます」
「ここまではさっきと同じですね」
「この時あなたは橋の上に立っています。そして近くには太った人がいます。太った人はあなたに気づいていません」
「嫌な予感がしてきました」
「あなたは太った人を突き落とすことで、トロッコを止めることができます。5人は助かりますが、当然太った人は命を落とします。あなたは痩せているので、自分自身が飛び降りてもトロッコは止まりません」
「ぐぬぬ…」
「さてあなたなら、どうしますか? 図を見てみますか?」
「…また図、あるの?」
「あります」
「図はいいです」
「えっ」
「図なしで考えます」
「…そんなこと言わずに、図を見てくださいよぉぉぉっ!!」
「やっぱモンスターじゃん!! だから嫌だったのよ!」
「すんまへん」
「しかもこの図だと太った人が転がっていって被害を与えそうだし…」
「太った人は転がらないです。無事に止まります」
「あと、トロッコに何か変なの入ってない? これは!?」
「気にしないでください。で、どうしますか?」
「うーん…」
「まあ、落とさないよね」
「やっぱそうかー!!」
「何か今回はさっきより凄いことになってたけど!?」
「気のせいです」
「この派生問題は、さっきとは違って、『突き落とさない』を選択する人が多いそうです。もちろん人間の場合で、です」
「わたしも、人に対し直接手を下すのは嫌だな」
「この派生問題はある種問題が卑怯で、問いかけの前提条件では『太った人の突き落としに失敗することはない』『太った人でトロッコは確実に止まる』『裁判で罪に問われることはない』ってのがあるんだけど、現実にそんなの想像しづらいから、考えにくいですよね」
「確かに、実際だと突き落とそうとして返り討ちにされるのとか、色々想像しちゃうね」
「うん。これ、少々悪問だと思います。でも道徳とは何なのかを考えるきっかけにはなりますね。ちなみにこれ、答えは出ていません」
「答え出てないの!?」
自動運転車への影響
「ちなみにこの問題、現実にも今話題の自動運転車を作る上で問題になってるんだよね」
「というと?」
「自動運転車が例えばスリップして、子供の集団に突っ込むか、それを回避して自動車自身が崖から落ちるか、という状況になったとします。すると、人工知能はどちらを選択すべきか、といった問題です」
「なるほど…人間だととっさの判断でどちらに転ぶかわからないけど、人工知能だと事前にどうすべきかプログラミングしておけるからってこと?」
「物分りがよすぎて気味が悪いですが、そういうことです。これについては色々思うところがあるんですが、それを今から語ると長くなりすぎて、何より筆者が倒れてしまうので、またの機会にします。ということで本日は以上!」
「はーい」
おわりに
「今回のお相手は夜中たわしと」
「鬼がお送りしました」
「また見てね!」
おすすめの書籍:『100の思考実験』
続き:思考実験「トロッコ問題」の答えを全力で考える/功利主義と義務論 - 夜中に前へ
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